2008年
11月04日(火曜日)
2−40 ミセス ワトソンとの出会い
家に着くと、何百キロもありそうで、視力を完全に失いかけているとい
う、ワトソン氏の妹のアネッカが私を斜めに見て、
「まあ!!
日本人の女の子が来るっていうから、髪を頭のてっぺんで縛り上げて
おまんじゅうにして、裾の割れているキモノを着て来ると思ったのに!
どうしてヨーロッパの服を着てるの?!」
それが彼女の第一声だった。
ゆっくりとした口調だけど半分あざ笑っているようで、そして頭の中心
がキーンと痺れそうに高い声だ。
それから、
「日本では猫を食べるのですってね。
だから私たち、決してチャイニーズレストランには行かないのよ」
と、ソファの上で無心に眠っている愛猫のジミーを横目で見ながら気味
悪そうに言い、
「日本ていうと、先の尖った山と木の橋とゲイシャの絵しか思い浮かば
ないんだけど、テレビで見たことあるわ。
みんなわらの床の家や、ボートに住んでいるんでしょう?」
しごくまじめに。
日本と中国の区別もつかないようだし、東南アジアのどこかの国と
混同しているみたい。
ワトソン氏は、
「申し訳ない。イギリスの学校では日本のことを何も教わらないから、
地方の人々は何も知らないのだ」
と、あとで謝って下さったけど、
あまりの知られてなさに、悲しくなって来た。
ワトソン氏のお母さん、ミセス ワトソンは、95才。
10年前にガン、5年前に脳卒中で右半身不随になられたのに、
通いの専門医、看護婦さん、そして家族の手厚い看護と励ましの
うちに、病苦と闘いながら命を取り留めて来たんだって。
5年前、付き添いをしていた妹のアネッカが目の大手術を受けて精神
混乱に陥って以来、
ワトソン氏はすべての役職を投げ打って、オックスフォードの5軒の学
生アパートの管理と、お母さんの世話に往復する生活に入った。
さあ、気分の良い時を見計らっての、お母さんとの対面だ。
ミセス ワトソンは、やせ細った顔に重そうな厚いメガネをかけて、
幼い子どものようなあどけない表情で口を少し開けたまま、
私をじっと見つめた。
私も不思議な感情に打たれ、彼女の潤んだ目の奥に見入った。
老母は本当に泣いていたんだ。
「そんなに遠い国から、一人で来たの?
それも、こんな田舎に、私の世話をしに?」
かぼそい、消え入るような声でそう言って、動くほうの手をモゾモゾす
るので、アネッカが何事かとふとんをのけると、
老母はその手をゆっくり顔に持って行き、涙を拭うために指をメガネの
下にくぐらせた。
私はドキッとしたよ。
日本の病院で付き添いをしていた時、うちのおばあちゃんがしたしぐさ
と全く同じだったから。
それからというもの、私はこのミセス ワトソンの付き添い役になった。
毎朝来る看護婦さんの補助をしたり、他愛ないおしゃべりをしたり、
流動食を作り、温度を計って一口ずつ食べさせたり…
口を閉じて首を横に振る彼女に、
「はい、グッドガール! もうひと口。 あーん」
彼女は毎日、そばに来る人に、
「あの子は私を何て呼んでいる?
マム(お母さん)と呼ぶように言いなさい」
と確認したけど、ほんとはどっちがお母さん役かわかったものでは
なかったさ。
ミニ ウェールズ案内
ウェールズの位置

横向きカンガルーのお腹のあたりって感じ?!
(地図はイギリス政府観光庁の公式サイトよりお借りしました)
ウェールズの絵葉書 1

↑ ウェールズ語で何か書いてあるけど、さっぱりわからないよね!
ウェールズの絵葉書 2

民族衣装を着た子どもたち
白いレースのついた黒いシルクハットがユニークな民族衣装
スコットランドの民族衣装であるタータンチェックは超有名だけど、
ウェールズのはあまり知られていないかな?
ウェールズの絵葉書 3

民族衣装を着た大人の女性
応援 (投票) よろしくお願いしまーす
う、ワトソン氏の妹のアネッカが私を斜めに見て、
「まあ!!
日本人の女の子が来るっていうから、髪を頭のてっぺんで縛り上げて
おまんじゅうにして、裾の割れているキモノを着て来ると思ったのに!
どうしてヨーロッパの服を着てるの?!」
それが彼女の第一声だった。
ゆっくりとした口調だけど半分あざ笑っているようで、そして頭の中心
がキーンと痺れそうに高い声だ。
それから、
「日本では猫を食べるのですってね。
だから私たち、決してチャイニーズレストランには行かないのよ」
と、ソファの上で無心に眠っている愛猫のジミーを横目で見ながら気味
悪そうに言い、
「日本ていうと、先の尖った山と木の橋とゲイシャの絵しか思い浮かば
ないんだけど、テレビで見たことあるわ。
みんなわらの床の家や、ボートに住んでいるんでしょう?」
しごくまじめに。
日本と中国の区別もつかないようだし、東南アジアのどこかの国と
混同しているみたい。
ワトソン氏は、
「申し訳ない。イギリスの学校では日本のことを何も教わらないから、
地方の人々は何も知らないのだ」
と、あとで謝って下さったけど、
あまりの知られてなさに、悲しくなって来た。
ワトソン氏のお母さん、ミセス ワトソンは、95才。
10年前にガン、5年前に脳卒中で右半身不随になられたのに、
通いの専門医、看護婦さん、そして家族の手厚い看護と励ましの
うちに、病苦と闘いながら命を取り留めて来たんだって。
5年前、付き添いをしていた妹のアネッカが目の大手術を受けて精神
混乱に陥って以来、
ワトソン氏はすべての役職を投げ打って、オックスフォードの5軒の学
生アパートの管理と、お母さんの世話に往復する生活に入った。
さあ、気分の良い時を見計らっての、お母さんとの対面だ。
ミセス ワトソンは、やせ細った顔に重そうな厚いメガネをかけて、
幼い子どものようなあどけない表情で口を少し開けたまま、
私をじっと見つめた。
私も不思議な感情に打たれ、彼女の潤んだ目の奥に見入った。
老母は本当に泣いていたんだ。
「そんなに遠い国から、一人で来たの?
それも、こんな田舎に、私の世話をしに?」
かぼそい、消え入るような声でそう言って、動くほうの手をモゾモゾす
るので、アネッカが何事かとふとんをのけると、
老母はその手をゆっくり顔に持って行き、涙を拭うために指をメガネの
下にくぐらせた。
私はドキッとしたよ。
日本の病院で付き添いをしていた時、うちのおばあちゃんがしたしぐさ
と全く同じだったから。
それからというもの、私はこのミセス ワトソンの付き添い役になった。
毎朝来る看護婦さんの補助をしたり、他愛ないおしゃべりをしたり、
流動食を作り、温度を計って一口ずつ食べさせたり…
口を閉じて首を横に振る彼女に、
「はい、グッドガール! もうひと口。 あーん」
彼女は毎日、そばに来る人に、
「あの子は私を何て呼んでいる?
マム(お母さん)と呼ぶように言いなさい」
と確認したけど、ほんとはどっちがお母さん役かわかったものでは
なかったさ。
ミニ ウェールズ案内
ウェールズの位置

横向きカンガルーのお腹のあたりって感じ?!
(地図はイギリス政府観光庁の公式サイトよりお借りしました)
ウェールズの絵葉書 1

↑ ウェールズ語で何か書いてあるけど、さっぱりわからないよね!
ウェールズの絵葉書 2

民族衣装を着た子どもたち
白いレースのついた黒いシルクハットがユニークな民族衣装
スコットランドの民族衣装であるタータンチェックは超有名だけど、
ウェールズのはあまり知られていないかな?
ウェールズの絵葉書 3

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